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未来工業株式会社

取締役相談役 山田昭男さん

“感動”をキーワードに創業以来黒字経営を続ける
“日本一社員がしあわせな会社”

ノルマ、残業は一切禁止
他社と違うことを「常に考える」

―― “日本一社員がしあわせな会社”として、ノルマ、残業は一切禁止。年間の休暇が有給休暇を除いて140日もあるなど大変ユニークな経営で、創業以来赤字なしを続けている未来工業を創業されましたが、演劇にどっぷりと浸かり、会社をクビになったことが起業のきっかけであるとのことですが、起業されるに当たって不安はなかったのですか?

山田 クビになったのは親父の会社でしたから、私はナンバー2でした。つまり、経営側の人間ですからサラリーマンの経験がないわけです。33歳にもなって、いきなりサラリーマンをやろうと思っても誰も使ってくれません。サラリーマンができないのであれば、飯を食うためには自分でやるしか仕方がないわけです。選択肢がないわけですから、怖いも不安もありません。やらざるを得なかったというのが正直なところです。

―― 「やらざるを得なかったというのが正直なところです」というお話でしたが、実は密かに勝算があったのではないですか?

山田 勝算も何もないです。我々の業界で一番大きな会社が松下電工ですが、創業した日から、松下電工と同じ商品を作ることになります。私たちが製造する電気設備製品は、寸法や原料などは国の規制で決まっているので替えることができません。しかし、取りつけ方に関しては、規制はありません。例えば洋服のボタンにしても、空いている穴をボタンで閉じる方法もあるけれど、ボタン同士がパチッとくっついた方が便利ではないか。そういった工夫をすることで生きる道を見出しました。寸法や原料は替えられない。それなら他社と違う取りつけ方を考えようということでものづくりを進めていきました。

―― ものづくりの工夫をすることで、大手企業に挑んでいったわけですね。

山田 はい。しかし「新しいやり方を考えよう」と、いきなり言っても不可能な話です。ですから朝起きて夜寝るまで、みんなと反対のことをやりました。その一例がノルマ、残業一切禁止というわけです。それが差別化であり、工夫を考えることができる知識を身につけようということを始めました。常に他社と違うことをやっているから、商品を作るときに工夫が生まれてくるのです。

演劇の魅力は観客が感動してくれること
社員が感動しなければお客様を
感動させることはできない

―― 演劇がきっかけの1つになって起業されたわけですが、演劇の経験が仕事に生かされているといったことはありますか?

山田 私が感じていた演劇の魅力は、見てくれた人が感動してくれることでした。それは仕事にもつながっています。作った品物を通じてお客様に感動してもらいたいという思いを持っています。未来工業の商品を取り付けると「とても簡単に取り付けることができる」「早く取り付けることができる」「安く取り付けることができる」「きれいに取り付けることができる」。そうしたお客様の声を“感動”という言葉で表現しています。
 そして、お客様を感動させるのは社員の力です。そのためには社員を感動させないと、社員はお客様を感動させてくれません。人材育成、人材教育といわれますが、当社では人材の材は、「材」ではなくは「財」。材料ではなく財産ですから当社では人財育成、人財教育であると常に言い続けています。

―― 差別化であり、社員の感動にも結びつくと思いますが、社員旅行も大変ユニークですね。

山田 毎年、社員旅行を実施していますが、5年に1度は海外へ行きます。東海地区では多くの企業が会社と個人の負担がそれぞれ5割ずつです。しかし当社は差別化ですから、100%会社が負担します。
昨年の2月が5年に1度の海外旅行の順番になりました。前回はオーストラリアでしたが、旅行先を決めることに関しても、当社では偉い人が決めることはありません。差別化で、他社と反対のことをしますから社員の中で選ばれた5人の旅行委員が旅行先を決めます。それでエジプトに決まったのですが、「最大のピラミッドであるクフ王のピラミッドを貸し切ろう」というアイデアが出されました。これは、私も考えつかなかったです。「なんでもやってみろ」と口癖のように言い続けている私自身も「テレビや新聞などマスコミに数多く取り上げられているから国内ではかなり知られている。でもトヨタやソニーなどのグローバルな企業ではないのだからOKが出るはずがない」と思っているわけです。既成概念に捉われていたわけです。ところが社員が掛け合ったところ、なんとOKが出ました。これにはびっくりしました。日本で初めてのことでした。
 ところがその後、エジプトが政情不安になったので旅行自体が中止になりました。ただ旅行費用は会社ではなく社員の財産ですから、使い道は社員の自由です。そこで社員たちの考えで旅行に使うはずだった1億円を東日本大震災の被災地に寄付しました。そのことをマスコミが取り上げましたから「君の会社はすごいな」と言われるわけです。知人、友人からそのように声を掛けられてうれしくない人はいません。これも社員の感動につながり、仕事を頑張ることにつながるのです。

経営にとって一番大事なことは
どうしたら社員が感動を覚えるか

―― 「差別化」「常に考える」など、創業者精神がまさに脈々と受け継がれていますね。

山田 ユニークという点では、かつて実施した海外旅行のミステリー旅行もその1つに挙げられます。最近でこそ、旅行会社が開催するようになりましたが、旅行会社が開催する以前から、当社の社員が考えて実施しました。
800人の社員がいますから、旅行委員が800人分のあみだくじを作りました。全員が、くじをひいて開けてみると、A、B、Cと書かれています。そして「何月何日の何時にマイナス5度とプラス30度の気候に対応できる服を用意して集合」と書かれているわけです。旅行当日、空港に集合すると「君はAだからパリ」「君はBだからフロリダ」「Cのあなたはハワイ」だと行き先が明かされます。Aのくじをひいた社員はパリに行きますから、プラス30度を想定した旅行カバンは旅行会社に預けて、マイナス5度を想定したカバンを持って旅行に出かけました。

―― まさにユニークですね。ところで企業メセナにも力を入れていますね。

山田 企業メセナは創業10年目からスタートしました。演劇やコンサートなどを開催していますが、実は企業メセナといっても完全無料で実施している企業はほとんどないと思います。当社は、ここでも差別化ですから無料で見ていただいています。
最も費用がかかったのはボリショイバレエ団の公演です。通常1人当たりチケットは10万円かかりますから、地方都市ではなかなか開催できません。普通では見ることのできない世界の超一流アーティストの舞台をタダで見ることができるということで希望者が殺到しました。舞台を見た人たちは「普通では見ることができないものを見せてもらえた」といって感動します。そして感動した人が社員に「君の会社は本当に素晴らしいな」と声をかけ、また社員の感動につながり、社員も喜んで仕事を頑張るわけです。どうしたら社員が感動を覚えるか。それを考えることが、当社の経営にとって一番大事なことなのです。