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岐阜県図書館館長

館長 石原佳洋さん

高いレファレンス力で多彩なニーズに応える中核図書館
今後はカウンターを飛び越え“能動的課題解決”へ

昨年、開館20周年を迎え、来館者1500万人を達成した岐阜県図書館

――最近、全国的にも図書館が話題となることが多いと思われますが、最近の県図書館の状況はいかがでしょうか。

石原 岐阜県では昨年、岐阜市にメディアコスモスができましたし、多治見市図書館がライブラリー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。岐阜県図書館も昨年7月7日に、開館20周年を迎え、来館者数1500万人を達成しました。ただ、岐阜県だけでなく、図書館自体が全国的に脚光を浴びている流れがあると思います。神奈川県海老名市の図書館や佐賀県武雄市の図書館を、民間企業が指定管理で運営するなど、従来とは異なる形態の図書館が登場して、図書館自体が話題になったのが、ここ数年の流れだと思っています。

――岐阜県図書館はどのような方に利用されているのですか。

石原 利用者の年齢層や男女比率では、男性は60代が突出しています。女性は30代と40代が、ほぼ同じ割合で高いです。子育て中の方がお子さんを連れて絵本を見に来たり、暮らしに役立つ本を探しに来ることが多いのではないかと思います。

――静かな図書館にあって、児童コーナーも充実。お子様連れの利用も多いように見受けられますが。

石原 静かに本を読みたい利用者もいらっしゃいますし、閲覧室の中で騒がしいと気になる方もいらっしゃいますから、そのあたりについては保護者の方も配慮されているように感じます。ただ、小さなお子さんを連れて、気兼ねなく訪れてほしいという気持ちもありますから、今年からエントランス部分にガーデンテーブルを置くなど、閲覧室以外の場所では、談笑しながらくつろいでいただけるよう配慮を行っています。また、託児サービスもありますので、そちらも利用していただければと思います。

様々なニーズに応えることができる高いレファレンス力が強み

――県図書館は、県の中核図書館ということですが、県図書館の特徴や市町村の図書館との違いや関わりについて教えてください。

石原 同じような本をそろえていると二重行政になりますので、どちらかというと市町村図書館では十分に所蔵されていないようなノンフィクション系の図書などを中心に収集しています。また、雑誌はバックナンバーがすべてそろっているところに意義があるため、継続して収集、保存しています。新しい情報を知る中で、過去をさかのぼって古い資料を調べたいというニーズにお応えできるのも岐阜県図書館の強みの一つだと思っています。

 岐阜県で唯一の中核図書館として、市町村図書館の司書職員の資質向上を支援する役割もあり、テーマ別、階層別の研修にも力を入れています。また、障がい者や外国人の方など、言葉でのコミュニケーションがとりにくい方のため、コミュニケーションボードを県下の公共図書館で一斉に導入するといった取り組みも行っています。

――研修の話題が出ましたが、今の司書に求められていることはどんなことでしょうか。

石原 図書館には、様々な方がいろいろな調べ物をするために訪れます。それに対して幅広く対応する力が求められていると思います。その点ではこれまでにも司書の能力向上を図っていますので、高いレファレンス力は強みだと思います。「昔住んでいたところの状況を知りたい。どこかに写真がありませんか」「仕事でこういうことを調べたいけど、どこにありますか」といったように、それぞれの人によって知りたいことは幅広く、同時に深い場合があります。利用者が求める情報にアクセスするためにどういうステップを踏んだらいいかということを瞬時に判別しお応えするには、かなりテクニックを要します。ですから司書には、いろんなところにアンテナを張って、普段から勉強しておくようアドバイスしています。

寄り添った対応で利用者が受け取るものも大きくなる

――お客様の求めるものは千差万別でしょうから、難しい要求にも応える必要がありますね。

石原 はい。これは県外の図書館の話ですが、小さなお子さんが訪れて、「魔法使いになるにはどうしたらいいですか」と聞かれました。それこそ図書館の司書がこぞって、子ども向けの本を探して提示したそうです。そのお子さんにとっては、せっかく芽生えた知りたいという欲求です。その人の立場に立って、どこまでそこに近づけるかが大事になります。どこまで寄り添って提供することができるかによって、その人が受け取るものも大きく異なってくると思います。

――先ほどノンフィクション系の図書などの品ぞろえが豊富だという話がありましたが、購入する本の選定について考え方を教えてください。

石原 隔週で実施している選書会で、類似の本があるかどうか検索しながら、本選びをしています。昨年、岐阜県図書館では約1万冊を購入しました。大雑把な計算では、50週で割ると週に200冊を購入していることになりますが、それは出版されている本の約1割に過ぎません。ということは、毎週2000冊のリストが来る中から選んでいることになります。県図書館として何を購入するべきかを常に考えながら選んでいるわけですが、司書の頭の中には単純な人気だけでなく、全県を見て揃えておきたい本があります。わずかなニーズかもしれないけれど、そのわずかなニーズを持った利用者が来た時、そのニーズに応えてあげたいという視点もあります。毎週の選書会は司書同士で議論のぶつかり合いもあって、膨大な情報量の中から、これはと思う本を厳選して蔵書に加えています。

イベントに合わせて関連本をリスト化することで、学びたい意欲をさらに刺激する

―― 昨年度は講演会や企画展示などのいろいろなイベントを開催されていますが、今年度の予定やイベントの効果について教えてください。

石原 今年は、八百津町が杉原千畝の「命のビザ」に関する資料を世界記憶遺産に申請されましたから、それを記念してパネル展と講演会を行いました。パネル展は14日間の開催で約5000人の来場者があり、講演会も満席。県民の関心の高さが伺えました。飛騨美濃合併140周年を記念した展示についても好評をいただいています。最近の取り組みとしては、イベントに併せて関連する本を必ずリスト化し提供するようにしています。展示を見たり、講演会を聞いた方がもう少し深く学んでみようということで、関連本が貸し出されるケースが増えていて、効果が表れていると思います。

紺野美沙子さんの力をお借りして、朗読に力を入れる

―― 紺野美沙子さんを名誉館長に迎えられました。名誉館長としてどんなことを期待されますか?

石原 紺野さんには今年1月にご就任いただき、これから岐阜県図書館の顔として大いに活躍を期待しているところです。昨年度は、二十五絃箏の生演奏とコラボした朗読劇「鶴の恩返し」を披露していただき、今年度は11月3日、「幸せの絵本」のテーマで公演いただきます。朗読は子どもの情操教育にもいいですし、声を出して本を読むことで脳が活性化することから高齢者にもぴったりです。紺野さんの助言をいただきながら、朗読に力を入れていきたいと考えています。また、紺野さんは国連開発計画親善大使としてもご活躍されています。紺野美沙子さんが発言されることで、内向きだと言われる日本人の目が海外に向くための1つのきっかけを作ることができないかと考えています。

カウンターを飛び越えて、“打って出る”ことのできる図書館員に

―― 県図書館が、今後どのようなサービスを県民に提供するのか、どのように存在価値を高めていくのか、目標やPRをお願いします。

石原 全国の図書館がいろいろな取り組みをしている中で、このままでは埋没してしまうという危機感があります。司書には、館から飛び出し自ら打って出ることを仕事の中で考えてほしいと言っています。従来型図書館サービスは、利用者が来て、借りたい本を貸す、返してもらった本を元に戻すということでした。レファレンスについても図書館の大事な機能なのですが、利用者からの「これを調べたいのですが」というアクションを待って対応する受動的なものに限られていました。これからはそうではなく、おせっかいかもしれないけれど、課題を持っている人のところへ出向き「こういうものがあります」と打って出る「能動的課題解決支援」にチャレンジしていきます。

また、新たな取り組みとして、時々のホットな話題に関連した本をリストアップして提示しています。今年は生誕300年ということもあり、絵師の伊藤若冲がとても人気です。周年の話題といえば、他にビートルズ来日50年、シェークスピア没後400年などもありました。あるいは国立西洋美術館をはじめとするル・コルビュジェの建築作品が世界遺産に登録されましたが、調べていくと、コルビュジェの弟子に羽島市出身の坂倉準三がいたりします。さらには選挙制度や憲法、オリンピックなど、ことあるごとに、話題のテーマに関連した図書館の本をリストアップして、積極的に情報提供することに取り組んでいます。

 ブックトークも新しく始めたイベントで、今年度は8回実施します。読書の達人が本を紹介するという本好きにはたまらない催しで、第4回までを情報科学芸術大学院大学(IAMAS)附属図書館の小林館長に講師を務めていただいています。その冒頭では、当館司書におススメの本を紹介してもらうことにしています。司書は本が大好きで図書館の仕事を選んだ人達です。これまではカウンターの内側にいて、どこにどういう情報があるかという道案内をしてきたわけですが、これからはカウンターを飛び越えて活躍してほしいと思っています。これも、これからの新しい図書館サービスの1つではないかと考えています。

 県図書館は、これまで以上に県民の皆様のお役にたてるよう変わろうとしていますので、是非ご期待いただきたいと思います。